議会報告

  • 伊藤 勝正
    第361回(令和5年2月)定例県議会 代表質問(伊藤勝正議員)

    ≪質問項目≫
    1、躍動する兵庫実現に向けた令和5年度当初予算編成について
    2、大阪・関西万博に向けた取組について
    3、不妊治療対策について
    4、豊かな海づくりによるブルーカーボン促進について
    5、県内大学生の県内就職率向上について
    6、県立病院におけるDX・情報セキュリティ対策について
    7、特殊詐欺対策の強化について



    ≪質問と答弁のダイジェスト≫

    1、躍動する兵庫実現に向けた令和5年度当初予算編成について

    (伊藤県議) 躍動する兵庫実現のための施策に関連して知事が発信しているキーワードに注目してみた。一つは、「大阪・関西万博」。大阪・関西万博は2025年に大阪市の夢洲で開催され、150の国、25の国際機関の参加を目標とし、約2、820万人の来場者と約2兆円の経済波及効果が見込まれ、この機会を活かさない手はない。
    1月に説明を受けた各部の令和5年度重要施策の説明では、ほとんどの部で目立った施策が聞かれなかった。既存の事業を各部や各地域でバラバラに取り組んだとしても、主役である開催地・大阪のインパクトにはかなわない。人や投資をもっとひきつけられる施策を検討し、展開するための大胆な予算編成をするべきではないか。
    また知事は「水素」や「カーボンニュートラル」といった言葉も頻繁に発信されており、その関連施策も多く予算編成されているが、これらの施策展開は国のエネルギー政策の動向や民間投資に負うところが大きく、県が主体性を発揮できる領域は少ない。たとえば、播磨臨海地域で進められているカーボンニュートラルポート形成には長期間の取組となるうえ、民間企業の参入と投資が事業の成否のカギを握っているので、県として、まさに民間企業が参画意欲をかきたてる仕掛けを作っていくべきではないか。
    今回は「大阪・関西万博」や「水素」「カーボンニュートラル」だけを取り上げたが、他の施策においてもスクラップ施策は目立つものの、ビルド施策はあまり目立たず、従来の延長線上の施策が多い印象をぬぐえない。厳しい財政規律を重視する中においても「躍動する兵庫」実現に向けて、県の主体性や独自性を発揮できる施策がどこに盛り込まれたのか所見を伺う。

    (斎藤知事) 大阪・関西万博に向けては、総額9.2億円の関連事業で構成するアクションプログラムとして一体的に施策を展開・発信する。ポイントとなるのは120近く応募のあったフィールドパビリオンへの取り組みであり、県内全体をパビリオンに見たてて、多様なプレイヤーと連携するなど全県をあげて推進する。こういった取組は全国でも行われていないが、失敗を恐れず挑戦していく。その際、地場産業など地域の力を突破口に兵庫の活性化に取り組んでいく。県立美術館など様々な場所で魅力を発信し、オール兵庫で大阪・関西に向けて取り組んでいくための機運をつくるスタートの予算であると捉えている。
    水素をはじめとする次世代成長産業の育成では、姫路を中心とする播磨地域におけるカーボンニュートラルポートの形成計画の今年度中の策定に向け、県主体で設置した推進協議会での官民連携に取り組むほか、成長産業への重点支援により、産業立地を加速させ、関連産業への中小企業の参入支援など全国トップレベルで財政支援を強化する。人材確保の面では、中小企業と連携し、若手従業員の本人負担を実質ゼロとする本県独自の新たな奨学金返済制度を創設し、中小企業の人材確保と若者の県内定着を促進するなど、人や投資を強力に呼び込む。
    加えて、特別支援学校など教育への投資や不妊治療・不育治療支援の所得制限の撤廃など誰も取り残さない県政を推進する。

    (伊藤県議コメント) フィールドパビリオンの取組については、これまで行ってきた地域創生戦略の取り組みとは違うということを示さなければならない。地域の力が必要であることから、県民局に思い切った予算配分をお願いしたい。



    2、大阪・関西万博に向けた取組について

    (伊藤県議) 県では来年度、大阪・関西万博に向けた取組の展開として「ひょうごフィールドパビリオン」の展開や万博会場等における県内魅力の発信、兵庫県域の大阪湾ベイエリア活性化の推進などに約1億8500万円を計上している。また、先日知事は、万博を見据えた誘客促進等のためにシンガポールでトッププロモーションを実施された。インバウンドにつながる取組として大変重要である。今後も海外からのお客様が兵庫に立ち寄ってもらえるよう、どのような国に、どのようなプロモーションを行っていくのか。
    また、兵庫県内の各地にも国内外のお客様に来てもらえるよう今から取組をしておく必要がある。来年度の予算編成に向けて、各県民局にも万博関連事業の割り当てをしているが、少し規模が小さいように思われる。各県民局と管内の市町が協力をして、それぞれの地域で目玉になる施策もしくは事業を策定してもらい、優秀なものには思い切った予算を配分するなどの大胆さが必要である。
    国際博覧会推進本部が策定した大阪・関西万博アクションプランでは、想定来場者総数が約2、820万人(うち海外来場者約350万人)となっている。大阪府が平成28年にまとめた基本構想では、ピーク時の1日当たり宿泊予定数は、愛知万博の例を参考に約9万8000人と予想しており、大阪府及び近隣府県の宿泊施設の空室定員数が約11万7000人分のため、十分対応できると考えているようだが、万博目的以外の宿泊客も今後、増加すると見込まれることから、大阪市内の宿泊供給能力を超えた宿泊客を兵庫県内に呼び込む具体策が必要となる。加えて、万博目的の修学旅行生に兵庫に多数来てもらえることも考えなければならない。
    このように万博の機会を逃さず、兵庫県県内に人を呼び込む効果的で総合的な戦略が必要ではないか。

    (斎藤知事) 誘客のターゲットとしてはインバウンドである。コロナ後のカ回復基調にあるが、兵庫県はインバウンドがまだ少し大阪や京都と比べると、遅れているのでそこをしっかりカバーしていくこと。それと平日で継続的な需要が見込まれるのが教育旅行で、修学旅行を中心とするものである。
    インバウンドについては旅程をつくる段階から組み入れていただく必要がある。例えば、欧米については1年半前から、東南アジアについては、半年前からということで、プロモーションを仕掛けていきたい。専用ウェブサイトの構築や、SNSの活用による魅力発信や国内外での旅行博がこれからあるので、そこに出店してツアー造成を促していきたい。また、欧米、アジア諸国など重点地域もこれから設定していくので、知事トップセールスや要人メディアとの交流など、そのような繋がる形にしていきたい。
    教育旅行については、主体的・対話的な学びや体験が一層重視される中で、SDGsに関する学びの要素を提供するフィールドパビリオンが大きなポイントになると考えている。あとは、防災も含めて今後の教育旅行のプログラム造成などで旅行会社と連携しながら行程をつくっていきたい。

    (伊藤県議コメント) フィールドパビリオンが大事になってくる。今まで取り組んできた地域創生戦略の地域での取り組みとどう違いを見せていくかということ。地場産品を使ったものかということもあると思うが、千載一遇のチャンスなので今までとは違うということを示すチャンスである。例えば、4月からスポーツ行政が知事部局に移る。そこでスポーツを軸にした、デスティネーションキャンペーンもスポーツにからめて、ワールドマスターズゲームズでもあるし、2030年には神戸空港の国際化や万博もある。来られた方がスポーツだったら兵庫だなというような発信もできると思う。また、県民局に思い切った予算をお願い申し上げる。



    4、豊かな海づくりによるブルーカーボン促進について

    (伊藤県議) 明石市から望む瀬戸内海では、高度経済成長期に進行した富栄養化の対策として水質規制等を厳しく推進してきた結果、水質は改善されたものの窒素やリンなどの栄養塩類の不足による養殖ノリの色落被害やイカナゴの歴史的な不良などが頻発し、水産資源への影響も深刻な状況となっている。
    このような環境の変化を受け、本県では長年にわたり海へ豊かな栄養分を供給するための漁業者の森づくり、農業者等と連携したため池のかいぼり、さらには、県内の下水処理場において冬期に基準の範囲内で下水処理放流水中の窒素濃度を引き上げる季節別運転を全国に先駆けて実施するなど、栄養塩類の適切な管理の実現に向けた取組を積極的に進めてきた。
    これら「豊かで美しいひょうごの海」の創出と継承に取り組む姿を全国に発信し、兵庫大会は無事成功のうちに開催できたが、その取組の輪をさらに広げ、県民総参加の持続的な活動としていくためには、豊かな海づくりの活動を水産資源の保全という領域にとどまらず、自然環境の中における海の役割が最大限発揮できる環境整備などにも配慮した新たな取組も必要となってきている。
    去る1月10日、JFグループ兵庫水産政策協議会から知事へ「全国豊かな海づくり大会のレガシーを県民総参加の活動にするために」と題した要望書が出され、豊かな海へのオール兵庫での取り組みや水産食料の地産地消の促進、森・川・海の物質循環の促進、廃棄物ゼロ社会実現とともに要望事項に挙げられ目を引いたのが「豊かな海づくりによるCO2吸収促進」である。
    これはブルーカーボンを意味するが、ブルーカーボンは海藻などの海洋植物が大気から海水に溶けた二酸化炭素を吸収して、光合成反応によりつくり出された有機炭素化合物が海底の泥に貯留されたものとされている。ブルーカーボンの促進には、藻場・浅場の再生や環境配慮型護岸の採用などを積極的に推進することが重要とされ、カーボンニュートラルを目指す本県としても積極的に推進していくべきである。
    福岡市ではその取組として、アマモ場づくりを中心とした博多湾の環境保全活動や博多湾ブルーカーボン・オフセット制度を創設して、海藻藻場の創出で実現されたCO2の吸収量をブルーカーボンクレジットとして販売し、企業などがこのクレジットを購入してブルーカーボン促進運動に資金援助する仕組みができている。
    昨年の12月定例会で知事は「ブルーカーボンの取組はしっかりやっていきたい」との言及があったが、その実現には部局間の連携や財源問題など課題は少なくない。そこで、豊かな海づくりに通じたブルーカーボン促進に向けた課題認識と、いかに取り組んでいくのかを伺う。

    (斎藤知事) 福岡市や神戸市が先進的な取り組みを進めつつあるが、ブルーカーボン促進のポイントは、①藻場の拡大②CO2吸収量のエビデンスの把握③企業等から資金を受ける仕組み、つまりクレジット取引の仕組みづくりを行っていくことである。
    藻場の拡大については、平成28年度から藻場再生に取り組むNPOを支援しているが、来年度からは産学官民による連絡会議を設置し、専門家から指導・助言を受けながら様々な方との連携を深めていきたい。CO2吸収量の把握やクレジット取引は、ブルーカーボンクレジットの認証・発行をしているJapanブルーエコノミー技術研究組合(JBE)の仕組みを活用しつつ、兵庫運河などでクレジット取引の実績がある神戸市と連携していきたい。
    また、兵庫県が全国トップレベルの生産量を誇るノリ養殖に注目していきたい。先般、企業版ふるさと納税として、金融機関から3,5億円をいただいたが、それをもとに創設する基金を活用して県の研究機関をはじめ部局横断でブルーカーボンの可能性を調査・研究していきたい。
    それとともに、脱炭素に資するノリの生産というのが、ブランディングの観点からも大事だと思うので、CO2排出量をわかりやすく表示するカーボンフットプリントの手法をノリの生産に活用し、脱炭素型の「兵庫のり」のブランディングを目指して、ノリ養殖・製造過程でのCO2排出量の見える化を行い、省エネや事業者のCO2削減の取り組みを支援していきたいと考えている。



    5、県内大学生の県内就職率向上について

    (伊藤県議) 文部科学省の令和4年度学校基本調査によると、県内大学数は全国5位の35校、学生数は全国6位の12万5千人であり、前途ある多くの若者が県内で学生生活を送っている。また、令和4年度の県内大学の入学者数は2万7千人で、うち県内出身者は49%だが、県外出身者は51%となっており、県外出身者が若干上回っている。大学進学をきっかけに兵庫県に縁する学生が多いというアドバンテージを活かしていくべきである。
    また、大学所在地別の出身地と就職先を調べた調査によると、過去5年間、県外出身で県内への就職者率は、大阪府の平均19%に比べ兵庫県は平均4%と県外出身者の県内企業への就職率が著しく低くなっている。単純計算で、県内大学の卒業生2万人のうち県外出身者が半数と仮定した場合、大阪府波に県内就職で県内に留まっていれば、これだけで約2千人の人口の社会増となる。縁あって県内大学に進学した他府県出身の学生が県内に留まる選択ができるよう後押しする支援策が必要である。
    たとえば、大多数の学生が利用している奨学金の返済支援は有効ではないかと考える。奨学金利用者の状況を見ると、借入金額は中央値285万6千円、毎月の返済額は中央値14、976円、返済期間は中央値15.5年となっている。また、奨学金利用者の56.2%は将来の返済に不安を感じており、特に自宅通学ではない県外出身者は、奨学金利用金額が大きいため、既存の奨学金返済支援事業を充実強化する必要がある。
    県では、来年度に新たな奨学金返済支援事業を創設し、奨学金の返済支援制度を設ける県内中小企業に対して、新卒者一人あたり60万円、つまり年間12万円を上限に最大5年間の補助をすることとしており、県内大学生の県内就職率に向上につながる今回の拡充は大いに評価するが、当該事業により県内中小企業へどれだけの新規採用者に繋がる見込みなのか。
    また、充実した奨学金返済支援制度があることを進学する受験生や学生に周知することや県内大学に進学した他府県出身の学生に兵庫県の魅力を実感してもらう取り組みも必要である。さらに、合同企業説明会や合同就職面接会のほか、県内企業の学生向けPRなど様々な県内大学生の県内就職率向上のための取組には、定期的な大学生の就職に関する意識調査や分析も重要だ。分析結果は県の取り組みだけでなく、学生にとって魅力的な県内企業の職場環境や福利厚生のヒントにもなるのではないか。
    大学進学をきっかけに兵庫県に縁する学生が多いというアドバンテージを活かすために、他府県出身の学生の県内就職率向上に向けた強力な取組が必要だと考えるが所見を伺う。

    (片山副知事) 他府県にはない魅力的なセールスポイントが必要と考えて、今回、新しい奨学金返済支援制度をはじめることとした。平均的に見て、奨学金の返済は年間18万円であるのに対し、地元企業が6万円負担する場合、県は倍の12万円補助することとし、就職から5年間で18万×5年間、約100万円の支援をおこなう仕組みで本人負担なしということにしたいと思っている。これを活用する企業には「ウチに就職したら奨学金の返済は5年間面倒みますよ」とPRしてもらい、人材確保につなげたい。県も積極的にPRしていく。
    また、Z世代を対象にした施策の展開にあたっては、県の若手職員の意見を取り入れたり、各種意識調査結果を踏まえ対応していきたい。

    (伊藤県議コメント) しっかり兵庫に魅力を感じて定着してもらえるような取組をZ世代の学生さんに向けて若手職員の意見を吸い上げて展開していただきたい。
    あと、例えば明舞団地で昔から取り組んでいる学生シェアハウスという取り組みがある。すごく兵庫県が先進的に取り組んだ内容で、低額の家賃でシェアハウスしていただくかわりに、その団地の自治会の活動に積極的に参画していただく、こうした学生シェアハウスの取り組み、これはまちづくり部が所管しているので、若手職員の中でも特に他部局の方の意見を取り入れていただきたいと思う。

公明党 兵庫県議会議員団はSDGsを県の政策に反映し、力強く推進していきます。

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